郷里を懐かしむ。

「ロンドンはどう?」と聞かれたら「ここは東京と変わらない。でもここは東京ではない。」と私は答えるでしょう。
この上また東京に戻って、もう既に塗りつぶされた地図の上をまた歩くのも、という気も少しするけど、ロンドンでは歩くたびに記憶を落とす、という感じがする。ここに記憶を落としたところで、もしかしたらもう拾いに来ることはないのかもしれないと思う。そしてこんな遠くはなれたところに記憶を落とすことに何してるんだろうなあ私は、という感覚もある。日本にいて、もう二度と行かない場所なんてきっとたくさんあるんだけど、「落とす」と思ったことはなかった。
結局ロンドンは私にとって日常になりきれないでいる(まあ当然なんだけど)ということか。
東京が「ここではない場所」であり、東京を「あの土地」と呼んで懐かしむ、という感覚を持つことが、多分今私がロンドンにいることの成果というか、受け取れるものというか、なのではないかと思いはじめました。でも単に私は東京を離れたことがなかったので(子供の頃埼玉にいたけどあそこは東京を『ここではない場所』とよべるほどの距離がなかった。)こう思うのかもしれない。実家が北海道だったり鹿児島だったりする人はいつもこういう感じをもっているのかな。